ツギハギ日本の歴史

日本の歴史を、歴史学者の先生方などの書籍などを元に記述します。

大正天皇の時代

大正3年(1914) は、高野辰之作詞・岡野貞一作曲による文部省唱歌『故郷』が発表された。

※リズムパターンは賛美歌『風はげしく』に由来する、三拍子の「欧米風」楽曲である。ただ、二拍子のリズムでも歌うことが可能になっていた。二拍子は鍬を用いるリズムに近く農耕民族の感性に親和的であることから、日本の故郷を思わせる歌として定着したとも考えられる(與那覇潤『日本人はなぜ存在するのか』)。

大正4年(1915) 12.13 Cecil DeMille監督による映画『The Cheat』が上映された。 

※出演した早川雪洲が演じたのは東洋人富豪のCheat(卑劣漢)であった。黄禍論の広まりから、日本人が経済力を強めてAmericaに挑戦しようとしているという風潮が社会にあり、映画にも反映されている(與那覇潤『日本人はなぜ存在するのか』)。

大正8年(1919) 8.1 北一輝らは、猶存社を結成した。

・1922年(和暦大正11) Ludwig Wittgenstein『Logisch-Philosophische Abhandlung(論理哲学論考)』が刊行された。

※言葉は世界を記述するための道具であると彼は考えた。命題(詩などを除いた全ての文)の構造を分析し、世界との対応関係を定め、言葉を適切に使用すれば、世界の謎のほとんどは解消されると彼は主張した(東浩紀『訂正可能性の哲学』)。

・大正13(1924) 4. 大川周明らは行地社を創立した。

※行地社は猶存社の後継とも見なされる。北一輝や周明による運動は、満蒙問題を巡るナショナリストとしての危機意識が背景にあった。彼らは腐敗した政党政治に対する中間層の反発をもとに、富の再分配の実現を企図した。こうした周明らによる国家社会主義的な発想は、中間層や下層出身者の多い、陸軍・海軍尉佐官級将校の精神に対して影響を与えうるものだった(秦郁彦『軍ファシズム運動史』第一章)。